「きのこを愛でる・採る・食べる」をめいっぱい楽しむ〝菌活〟。その活動をライフワークとする「きのこ博士・牛島先生」が、鳥取県で見られる種をレクチャー。メイン写真をクリックすると、食用か否かがわかる、隠れコメントもあり!
この顔にご用心!〝よくあたる〟きのこ
【ツキヨタケ】
ツキヨタケ(月夜茸)はブナやミズナラ、まれにコナラなどの広葉樹の枯れ木に多数が重なって群生し、大きいものだと傘の直径が20cmを超える。発生時期は秋〜晩秋だが、沢沿いの涼しい場所だと初夏から姿を見かける。〝最も誤食事故の多いきのこ〟として有名なほか、ヒダが光る発光性を持つことでも知られる。発光はそれほど強くないが、傘が開いて間もない個体はよく光るので、完全に日が暮れてから目を凝らして観察してみよう。
傘は明るい茶色で表面に鱗片があり、一見シイタケのようにも見えるが、次第に紫色を帯び、のちに部分的に色あせる。ヒダと柄の境目にはツバのように見える隆起「環帯」(下の写真左)がある。柄は通常傘の端に付くが、倒木の真上に発生すると中心に付くこともあり、断面には黒いシミがある。ちなみに、ツキヨタケによく似た食用きのこは、シイタケ、ムキタケ、ヒラタケ。これらには環帯や柄の断面の黒いシミはない。特に晩秋に生えるムキタケは、ツキヨタケと同じ枯れ木に同時に生える場合(下の写真右)があるのでさらに注意が必要だ。
毒のあるもの(カエンタケ以外)も含めほとんどのきのこは、手で触れたり香りを嗅いだり、また誤って口に入れても吐き出し飲み込まなければ、問題はない。しかし〝よくある迷信〟、例えば塩漬けにすると食べられる、ナスと煮れば良い、鮮やかな色は毒がある…などは非常に危険な判断なので、やはり各々の種の特徴をしっかり理解してほしい。
ツキヨタケは、我々にとっては毒きのこだが、森の物質循環においては分解者として大いに貢献している。ただ、なぜ毒があり自ら光っているのか、まだまだ不思議がいっぱいのきのこである。
牛島秀爾(うしじま・しゅうじ) 文・写真
(一財)日本きのこセンター菌蕈研究所主任研究員。野生きのこの調査・分類などを行い、外来きのこ鑑定にも対応中。休日は身近なきのこを探しつつ、ブナ林の小川でフライフィッシングをしてイワナを観て歩いている。日本特用林産振興会きのこアドバイザー、鹿野河内川河川保護協会会員。