大好きな富士山麓の別荘地を散策する水木さん
猫は「幸福の観察者」
大好きな富士山麓の別荘地を散策する水木さん
水木さんのモットーは〝楽をして、のんびり暮らすこと〟。「あくせく働き、アタフタ死ぬのはつまらない」とよく言っていた。
ところが現実の水木さんは、日曜日も休まないほどの働きバチ。貧乏時代は「餓死しない」ため、有名になってからは、水木プロに関わる十数人の生活のため、仕事を休めなかった。
そこで、憧れの対象となったのが猫である。
水木さんが強調していたのは、猫が犬と違って人間に忠節を尽くさないこと。気の向いた時だけやってきて、そうでなければ別の所へ行く。食べ物は人間に任せて、睡眠を好み、気に入った相手と交尾する。人間社会に溶け込んで暮らしていながら、「動物本来の自由を失くしていない」のだ。
猫を意識するキッカケは、エッセーなどに何度も登場するが、仕事場の窓の外。
塀の上が猫の通り道になっていて何匹もの猫が往来した。屋根の上で昼寝をしたり、木に登って雀を追ったり、木陰で2匹が恋をささやいたり……。そして時折ふと立ち止まり、仕事中の水木さんをジッと見詰める。
「“あんた、幸せ?”ってね。猫の方が人間よりずっとカシコイんです!」
水木さんによれば、猫は人間世界に送り込まれた「幸福の観察者」なのである。
妖怪ファイル>No.8
子どもの姿でいたずら
キジムナー
沖縄県は霊文化の豊かな土地。町や村には厳しく守られた聖域のウタキ(御嶽)(※)があり、屋根の上には魔除けのシーサー(獅子)、マブイ(魂)についての相談に応じるユタ(民間の
キジムナーは、その沖縄で最も有名な妖怪。枝からたくさんの気根が垂れ下がり、1本の木なのに小さな森のように見える古いガジュマルに棲む。赤い顔、赤い髪の子ども姿で、牛や馬をからかって跳びはねさせる。「仲良くなると金持ちになれる」が、「怒らせるといたずらの報復に遭う」との伝承も。また、海上を往来する火は「キジムナーの火」と呼ばれ、漁が上手なキジムナーの
ちょっと恐いのは「金縛り」を行うこと。人間が寝ているとやってきて胸の上を押さえつける。するとその人は起きれなくなるのだ。ガジュマルの近くで昼寝する時は、気を付けた方がいいかもしれない。
※御嶽=沖縄で神を祀る聖所
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ノンフィション作家。境港市生まれ。同郷の先輩である水木しげるさんに約2年間密着取材し、『妖怪と歩く ドキュメント水木しげる』(1994年新潮文庫)※を刊行。主書に『日本海のイカ』『北里大学病院24時』『血脈の日本古代史』など。
※今井書店より復刻版発売中
漫画家・イラストレーター。石川県生まれ、鳥取県育ち。
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