アメリカ旅行中の水木さん(写真右)と筆者(1993年、カリフォルニアのインディアン居留地)
奇人・変人が幸せな人生の手本
アメリカ旅行中の水木さん(写真右)と筆者(1993年、カリフォルニアのインディアン居留地)
水木さん特有の人物評価の基準に、「奇人・変人」ぶりというのがある。誰かと出会って、その人を評価する時の第一声が、「あの人、変わってます!」。「常識」をはみ出しているか否かが、とても重要なポイントらしい。
有名どころでは、熱狂的ファンを持つ伝説の漫画家・つげ義春さん。一時、水木プロダクションで働いていたことがあった。
「つげさんが言うんですよ、『首の上に頭があるから重たい』と。変でしょ? そんなこと考える人はニュートン以来です」。その場の笑いのタネなので、嘲笑の対象というわけではない。つげさん級の奇人に対する、最大級の賛辞なのだ。
水木さんに言わせると、幸福な人生とは「自分の好きなことができる人生」。逆に「世間のしがらみに縛られた人生」は、幸せではない。従って、はみ出しを気にしない奇人・変人の人生こそ、「手本」なのだ。
水木さんの父は、「働く姿を見たことのない、“静養第一”の人」だった。また尊敬する南方熊楠(※)は、全裸同然の姿で世界レベルの粘菌の研究を続けた。
もっとも。誰にも負けない奇人・変人界No.1は、「死者の声」を聞きつつ「幸福」を追求し、日本に「妖怪ワールド」を確立した、水木さんその人では?
※南方熊楠=1867〜1941。和歌山県出身。博物学、民俗学の分野における近代日本の先駆者的存在。
妖怪ファイル>No.11
口裂け女
母親の妖怪のデフォルメか
薄暗がりに、マスクをした長い髪の女が立っていて、通りかかった子どもに「私、きれい?」と声をかける。「きれい」と答えれば、「これでも…?」と言いながらマスクを外す。その顔は般若のように恐ろしく、口は耳まで大きく裂けている!
『口裂け女』は1979年、突如として都市から出現。小学生を発端に大人も巻き込んで、またたく間に全国へと噂が広まった現代の妖怪だ。
民俗学者の宮田登さんは、『口裂け女』は昔の『
現代では、そんな母親の一方的愛情が、子どもたちには圧力となり、恐怖感に変わる。「きれい?」が「勉強した?」に聞こえるのかもしれない。
▼参考文献:宮田登『妖怪の民俗学―日本の見えない空間』(1990年、岩波書店、同時代ライブラリー)
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ノンフィション作家。境港市生まれ。同郷の先輩である水木しげるさんに約2年間密着取材し、『妖怪と歩く ドキュメント水木しげる』(1994年新潮文庫)※を刊行。主書に『日本海のイカ』『北里大学病院24時』『血脈の日本古代史』など。
※今井書店より復刻版発売中
漫画家・イラストレーター。石川県生まれ、鳥取県育ち。
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