「きのこを愛でる・採る・食べる」をめいっぱい楽しむ〝菌活〟。その活動をライフワークとする「きのこ博士・牛島先生」が、鳥取県で見られる種をレクチャー。メイン写真をクリックすると、食用か否かがわかる、隠れコメントもあり!
文・写真/牛島秀爾
美しく光る菌糸を持つ「ザーザ」
【ナラタケ(楢茸)】
初夏から晩秋にかけて、倒木や腐朽木の周りに群生する「ナラタケ」。鳥取県では「ザーザ」と呼ばれ親しまれており、その由来は、刀のツバ「座(ザ)」に似た柄を持つことかららしい。
ナラタケは日本には少なくとも7種あり、おいしいものやまずいもの(中毒の心配がある)、樹木に対する病害性が強いものなどがある。形状がよく似ているので、経験を積まないと見分けるのが難しい。実際にナラタケとして食べられている現場では数種が混じっていると言って良く、広い意味で「ナラタケ」あるいは地方名(例:宮城県ではオリミキ)などと呼ばれている。その中のいくつかを紹介する。
ナラタケは秋の食用きのことして有名だ。なかでも「ワタゲナラタケ(ヤワナラタケ)」や「キツブナラタケ」、「ヤチナラタケ」はいずれも傘にヌメリがありおいしい。旨みのあるだしが出るので特に汁物は絶品で、炒め物や和え物などにもよく合い万能だ。
また、世界最大の生物と言われる「オニナラタケ」は、傘にとげ状の鱗片があり、大型でたくさん採れる。山での料理に役立ったが、ヌメリがなく旨みも少ない気がした。
要注意は「ナラタケモドキ」。柄にツバがないので最もわかりやすい。果樹や街路樹などに寄生し腐らせるナラタケ病を発生させる。たくさん食べたり、加熱が不十分だったりすると、中毒する恐れがある。
夜の森を歩いていたら、ふと地面がぼやっと明るいのに気づいた。ナラタケの根状菌糸束(※)が、光っているのだ。黒い針金状の菌糸を地面や倒木の樹皮の内側に幾重にも伸ばし、すみかを広げる。美しく光るのを見て、森の息遣いを身近に感じた体験だった。
※菌糸が束になって外皮が黒く硬くなった太い(5mm前後)針金状のもの。
『きのこ図鑑 道端から奥山まで。採って食べて楽しむ菌活』
著者:牛島秀爾
出版社:つり人社
発行日: 2021年
サイズ:A5判(ページ数128ページ)
■このコラムに登場するきのこも紹介されています。
牛島秀爾(うしじま・しゅうじ) 文・写真
(一財)日本きのこセンター菌蕈研究所主任研究員。野生きのこの調査・分類などを行い、外来きのこ鑑定にも対応中。休日は身近なきのこを探しつつ、ブナ林の小川でフライフィッシングをしてイワナを観て歩いている。日本特用林産振興会きのこアドバイザー、鹿野河内川河川保護協会会員。