「きのこを愛でる・採る・食べる」をめいっぱい楽しむ〝菌活〟。その活動をライフワークとする「きのこ博士・牛島先生」が、鳥取県で見られる種をレクチャー。メイン写真をクリックすると、食用か否かがわかる、隠れコメントもあり!
文・写真/牛島秀爾
ぶよぶよ!しわしわ?変幻自在の謎生態
【タマキクラゲ(珠木耳)】
主に春と秋、まれに冬、コナラ・クヌギ・ミズナラなどの枝先やその樹下に、数珠状に連なってくっついているのが、タマキクラゲだ。観察は、降雨後がベスト。落葉広葉樹のドングリの木がある公園に出かけてみよう。冬から春の気温が緩んでくるころなら、雪面によく落ちているので見付けやすい。
形は全く違うが、中華料理でよく使われる「アラゲキクラゲ」などと同じキクラゲ科に所属する。あめ色で半透明、大きいもので直径30ミリほど。肉厚で丸く扁平なだんご状で、表面には細かいつぶつぶがある。通常はぶよぶよとした玉状だが、乾くとしわしわで小さくなり、学名「uvapassa」(イタリア語で「干しブドウ」という意味)の通りの形状になるのも面白い。
一般的な食用のきのことは形がかなり異なるが、その活用法は無限大。無味無臭なのでクセがなく、食感の良さをいかして、酢の物にしたり、刺身のように醤油で食べたり、甘味にしても良い。調理法はシンプルで、きれいに枝から取って、さっと湯がく。オススメはみつまめだ。湯がくと半透明になり、寒天やこんにゃくに似た歯応えが楽しめる。
タマキクラゲは、なぜか細い枝を好んで生える。その理由はなんだろうか。なんらかの役割や戦略があるように思うが、いまだ謎のままだ。
『きのこ図鑑 道端から奥山まで。採って食べて楽しむ菌活』
著者:牛島秀爾
出版社:つり人社
発行日: 2021年
サイズ:A5判(ページ数128ページ)
■このコラムに登場するきのこも紹介されています。
牛島秀爾(うしじま・しゅうじ) 文・写真
(一財)日本きのこセンター菌蕈研究所主任研究員。野生きのこの調査・分類などを行い、外来きのこ鑑定にも対応中。休日は身近なきのこを探しつつ、ブナ林の小川でフライフィッシングをしてイワナを観て歩いている。日本特用林産振興会きのこアドバイザー、鹿野河内川河川保護協会会員。